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「女子アナ」に「女子」ってなんで付いてるの?女子アナ役を演じた俳優が、現役アナウンサー・佐々木真奈美さんにホンネで聞いてみた。

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現在製作中の連続ドラマ『報道バズ』。ニューヨークのニュースアプリ会社「報道バズ」を舞台に日本人ジャーナリストたちが奮闘する、日米合作の社会派ドラマです。私はプロデューサー兼俳優として、女性アナウンサーの主人公・和田明日香の役を演じています。

明日香は、「女子アナ」として、日本のテレビ局でバラエティ番組を中心に活動をしていました。しかし、役割を押し付けられる職場の空気やセクハラ文化にうんざりし、もともと憧れだった報道に携わるため、一念発起して渡米、報道バズに転職します。

本作のクラウドファンディングに奔走していた矢先、なんと現在ニューヨークでご活躍の現役アナウンサー・佐々木真奈美さんに、『報道バズ』のトピックをテーマにお話をお伺いする貴重な機会をいただきました。以下、対談形式でご覧ください。


MANAMIsasaki佐々木真奈美さんプロフィール:

山形テレビにアナウンサー兼記者として入社後、TBSニュースバードキャスターに。番組内では東日本大震災のレポートや、東証からのマーケット中継も担当した。2016年に渡米。ノースカロライナ大学チャペルヒル校客員研究員としてジャーナリズムを学んだ後ニューヨークを拠点にレポーターとして活動。現在の出演番組は、TBS「ビジネスクリック」、TBSニュースバード、さくらラジオ「Have a good day」、BTV「Made in NY」など。
公式ブログ:https://ameblo.jp/manami-sasaki/


 

本田真穂(以下「真穂」):真奈美さん、今日はお忙しい中お時間を作ってくださり、どうもありがとうございます!

佐々木真奈美さん(以下「真奈美」、敬称略):いえいえ、とんでもないです!真穂さんが今作っていらっしゃるドラマについてお伺いしたいと思っていたんです。日本での仕事を辞めて渡米する女子アナの話なんですよね、まさに私!と思いました。

真穂:えー、そう言っていただけて嬉しいです。実は、『報道バズ』について真奈美さんからメッセージをいただいた時、もしかして怒られるのかなと思ってドキドキしたんですよ (笑)。本物のアナウンサーさんにしてみたら、和田明日香は、現実と違う、アナウンサーはそういうことは言わない又はやらない、などのご指摘をいただいてしまうかもしれないと心配で。もちろんベストは尽くしましたが、ニセモノの私には限界の部分もあって…。昨日真奈美さんに会った時に私もお話を伺いたいと思ったんですけど、なんだか怖くて言い出せなかったんです。

真奈美:えー、そんな (笑)。女子アナのことをすごくエッジの効いた視点で取り上げてくださって、むしろ嬉しいです。予告編は拝見しましたが、まだ完成していないんですよね。どういうストーリーなんですか?

真穂: 『報道バズ』は、アナウンサーである主人公の和田明日香が、日本のテレビ局を辞めて、長年の夢であった報道に携わるためニューヨークのニュースアプリ会社に転職するところから物語が始まります。アメリカで心機一転、ジャーナリストとしての新たな挑戦を前に期待に胸を膨らませていた明日香でしたが、すぐに様々な困難に直面することに… (続く)、というストーリーです。

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真奈美:日本とアメリカの事情は全く違いますものね。私も日米でアナウンサーをやってみて、いろいろと感じたことがありました。実は、ノースカロライナ大学チャペルヒル校(UNC)のSchool of Media and Journalism(スクール・オブ・メディア・アンド・ジャーナリズム)に客員研究員として在籍していた時に、日本とアメリカのアナウンサーを比較する、という研究をしていたんですよ。

真穂:日米アナウンサーの違い!興味深いですね。是非教えてください。

真奈美:まず、リクルートのされ方、アナウンサーになるまでの過程が全然違います。リサーチの一環で私のアンケートに答えてくださったアメリカのニュースアンカーの皆さんは全員、記者・ジャーナリストとして入社し、そこで評価されてニュースアンカーになっていらっしゃいました。ジャーナリズムのバックグラウンドがあるので、あたり前のように自分で取材できるし、映像も撮れるし、編集もできるのがアメリカでは一般的です。

真穂:そうなんですね。日本はどうなのですか?

真奈美:日本は、アナウンサー職としての募集があり、基本的にそこで採用されます。もちろん研修は行われますが、番組収録の現場で、他のスタッフと比べてアナウンサーが一番若く経験が浅い、という状況も珍しくありません。本来アンカーは、最終伝達者としての責任があるため、番組のスタッフの中でも特に経験や知識のある人がなるべきだと思うのですが…。このように、日米では、アナウンサーになるまでのシステムが全然違うんです。

真穂:へえ、アメリカの方が実力主義が徹底している様子ですね。

真奈美:もちろん日本でも経験のあるアナウンサーが番組にとって大切だという意識はプロデューサー側も持っていると思うのですが、アナウンサーの人気が番組の視聴率を左右することもあり、経験うんぬんよりも、若さや見た目による男性からの人気を基準にして番組に起用されるケースもあるんです。

真穂:『報道バズ』では、明日香が情熱をかけたレポートをしても、実力を評価されるどころか、「ブサイク」「見た目だけが売りのクセに」と見た目や女性であることに対する誹謗中傷がネットで集まる、というシーンを入れています。

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真奈美:女子アナのあるあるですね (笑)。私は、そんな日本のアナウンサーの現状に疑問を持ち、当時英語がほとんど話せなかったにも関わらず、実力主義が根強いアメリカに来てみたんです。ちなみに私が今頂いているNYマーケットリポーターや、全米ラジオのDJの仕事などは、連絡先を聞いて自分の足で売り込みに行きました。NYで日本人がアナウンサーとして活躍するのは本当に簡単なことではありませんが、恥ずかしがらずに行動することが大事!これもアメリカ人から学びました。

真穂:すごいですね、なかなか思っていても実際に行動できるものではないので。真奈美さんの勇気と行動力、ご自分のやりたいことへのコミットメントを尊敬します。

Manami_Sasaki_Photos_Web(左:ノースカロライナ大学のキャンパスで真奈美さんの最後の日に撮った一枚。右:全国ラジオ「さくらラジオ」のDJを担当していらっしゃる真奈美さん)

真穂:『報道バズ』の明日香は日本で報道をやりたくてもできなかったという設定なのですが、実際にアナウンサー職として採用された女性は、日本ではどのように報道を目指せば良いのでしょうか。その分野でご活躍の女性アナウンサーもたくさんいらっしゃいますよね。

真奈美:全国放送の報道番組のキャスターになるのは本当に狭き門ですよ。報道に行きたかったら、多くのバラエティ番組に出演し、結果を出すことが近道かもしれません…

真穂:バラエティで結果を出すというのは具体的に、番組を上手に進行するとか、とっさの時に機転を利かせるとか、面白いことを言ったりやったりして笑いを取るとか、それによって他にはないキャラを確立するとか、そういうことかと想像しますが…。

真奈美:アナウンサーは常に現場で経験を積んで、仕事に慣れていくことが重要です。見た目の良さで男性からの人気を得たり、バラエティ番組で重宝されて番組出演が増えたりするほどキャリアアップをしやすいシステムになっているのだと思います。女性の場合、アナウンサーになるには、ミスコンに出場するのが近道だとも言われますしね (笑)。

真穂:出た、ミスコン (笑)。私たちが早稲田に行ってた頃はなかったので、早大生には不利だったんですね。

真奈美:仮にあっても、私は出られるような自信は無かったですが(笑)。

真穂:確かに、キー局だと倍率が数千倍などとも言われる女性アナウンサーさんの中には、モデル出身、ミスコン出身などと形容されている方々もたくさんいらっしゃいますもんね。そういう話題性があれば、視聴率には有利ということですね。人気が重視される職業ということでは、やはり芸能人のようなタレント性が求められるのですかね?

真奈美:そこが難しいところです。フリーランスの人たちは別として、明らかに人気によって運命が左右される職業であるにも関わらず、アナウンサーは基本的には会社員です。なので、例えば結婚報告などをすると、「一般人なのに調子に乗りやがって」「芸能人気取りか」と言われてしまう。

真穂:あぁ、そういえば、『報道バズ』発展段階のリサーチの時にお話を伺った関係者の方が、「女子アナは大変だよ。芸能人のように顔が売れている女子アナは、接待などの場に呼ばれる機会が多いけど、会社員だからどんなに疲れていても上からお呼びがかかれば行かなきゃいけないし、どんなに翌朝の仕事が早くても遅くまで付き合わなきゃいけない。局にとっては安く使えるアイドルだよ。」とおっしゃっていたのを覚えています。「アイドル」と「会社員」、会社からも世間からも二つの役割を同時に押し付けられたら大変ですね。そもそも「女子アナ」という言葉自体に、「可愛らしい」「親しみやすい」といった、アイドル的な響きがありますよね。

真奈美:男子アナという言葉はないですもんね (笑)。

真穂:男子アナ… という言葉は違和感がすごいですね (笑)。女子アナと呼ばれる職業に実際に就いてらっしゃる方々は、もちろん人それぞれだとは思うのですが、ご自身がそう呼ばれることについてどういうお考えを持っていらっしゃるものなのでしょうか。

真奈美:ちやほやされたい、人気者になりたい、というアイドル志望の女性たちがアナウンサーを目指すケースもありますが、大抵はそうした扱いに疑問を持っている女性アナウンサーがほとんどではないでしょうか。世間では華やかなイメージがありますが、実際は体力勝負の過酷な仕事内容である上、アイドル的な価値を求められることで私生活にも少なからず影響が出ますから。

真穂:そうなんですね、日本の女性アナウンサーの皆さんが、会社や世間から「女子アナ」というレッテルを貼られるということがどういうことか、少しだけ具体的に想像できた気がします。「女子アナマニアの女子アナ」というニックネームをお持ちな上に、アナウンサーとしても従来の枠にとらわれず独自のキャリアを築いてきた真奈美さんに貴重なお話をお伺いできて、とても勉強になりました。

真奈美:そんな (笑)。真穂さんたちのドラマは、女子アナたちが雇われの身では言えないことを代弁してくれていると思います。報道バズは女子アナの味方です!早く全体を通して見てみたい。楽しみで仕方ないです。

真穂:だー、ありがとうございます(涙)。完成させるべく尽力します。本日は貴重なお時間をいただき、本当にどうも有難うございました。

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佐々木真奈美さん、私のような外部の者では知りえない貴重なお話を聞かせてくださり、また、心強い応援のお言葉までくださり、どうも有難うございました。

「女子アナをエッジの効いた視点で取り上げている」と真奈美さんが表現してくださった『報道バズ』は、新人ジャーナリストとして成長していく女性アナウンサーの主人公の周りで起こる、セクハラ、ネット炎上、メディアのやらせ報道などの社会問題をテーマにした、社会派エンターテイメント作品です。

メディアのタブーと戦うジャーナリストの物語であると同時に、何をするにも「女のくせに」「女だから」「女らしく」を投げつけてくる社会を必死で生き抜く、一人の人間のストーリーです。

『報道バズ』を完成させて世に出すには、皆様のご協力が必要です。

様々な意見が存在するトピックこそ、多くの人が楽しんでみられるエンターテイメントに積極的に取り入れていきたい。そうして議論を引き起こしていきたい。川出真理、近藤司、私からなるニューヨーク在住の映像制作チーム「Derrrrruq!!! (デルック)」は、そんな想いで4年以上に渡りこのプロジェクトに全力を注いできました。

作品とキャンペーンの詳細を掲載したキックスターターページのリンクを以下にご案内いたします。ご検討のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

連続ドラマ「報道バズ」クラウドファンディングキャンペーン→ http://kck.st/2u8rx8o

☆この記事の内容は、佐々木真奈美さんのお話をもとに、著者が抜粋、文章化、編集したものです。内容に関するご意見、お問い合わせは、info@mahohonda.com までお願いいたします。

☆ この投稿は、8月30日のHuffpost Japanに転載されました。

_DSC9041Photo by Masaki Hori

渡米10年目にしてオフ・ブロードウェイ・デビュー。私がニューヨークに居続ける理由。

IMG_1663何度見ても写真に収めたくなるマンハッタン・スカイライン

2018年、6月3日。

その日、私はマンハッタンの劇場にいて、自分にとっていわゆる「オフ・ブロードウェイ・デビュー」となった舞台『Time’s Journey Through a Room』(*1) に出演していました。

2009年、6月3日。

その日、私はグランド・セントラル駅の近くにいて、「Heavy」のスティッカーが貼られた巨大なスーツケースを引きずりながら、途方にくれていました。ジョン・F・ ケネディ国際空港から市内に向かうバスの中で、パスポートと所持金のすべてを盗まれてしまったからです。財布は空っぽ、頭は真っ白でしたが、この日から憧れのニューヨーク生活が始まると思うと、胸は期待ではち切れんばかりでした。

6月3日は、私の渡米記念日です。

今年の記念日をもって、私のニューヨーク在住歴は丸9年となり、10年目に突入しました。

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—10年後を知っていたら、ニューヨークには来ていなかったかも。

毎年この時期は、「渡米当時の私が、今の私を見たらどう思うだろう」というようなことを悶々と考えてしまいます。

6月までの間、上記の舞台に参加できたことは、我ながら身にあまる光栄だったと今でも思います。ただ、渡米当時の私に、「あなたは9年経たないとオフ・ブロードウェイ・プロダクション(*2) の舞台には立てないよ」、という事実だけを教えてあげたら、彼女はとっとと日本に帰ってしまったかもしれない、とも思います。

あの時は、ニューヨークで頑張ったら、きっと、ぐんぐんスキルアップして、いろんな仕事ができて、楽しい未来が待っているはず!ということばかりを考えていて、知らなかったこと、わかっているつもりでわかっていなかったことが多すぎました。

—ここが辛いよ、ニューヨーク。

どこに住んでいようとも困難はつきものですが、外国人としてアメリカ合衆国で生活していくのは、決して簡単とは言えません。

まず、外国人である私たちは、ビザを取って、それを存続させていないと、この国には住み続けられません。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、俳優として働くために必要なアーティスト・ビザ(O-1)や、アーティスト・グリーンカード (EB-1) を取得するためには、多額の費用と、これまでの実績を証明する長い長いプロセスが必要です。

自分が一生懸命積み上げてきた実績が全否定されるかのような敗北感、拠り所にしてきた価値や信念を嘲笑われるかのような屈辱感、常に演じる仕事に関わっていないとアメリカには居られないという焦燥感と恐怖が、ビザ取得の過程にはついて回ります。また、実績を証明するために必要な推薦状を求めて頭を下げて回る中で起こり得るパワー・ハラスメントやセクシャル・ハラスメントの数々を、私は何度も見聞きしてきました。

外国人が学生の間は、特別な許可をもらわないとお金を稼げませんし、就労ビザを持っていても、登録済みの雇用主以外とは仕事をしてはいけないことになっており、アルバイトなどの副業も基本的にはできません。それにも関らず、生活費、学生ローン、必要経費の数々は、容赦なく財布と銀行口座に襲いかかります。高騰し続ける家賃は東京の3倍4倍(*3) はするかというほどで、人見知りを我慢して数人とルームシェアをして寝どころを確保するも、家主やルームメイトとのトラブルは日常茶飯事。ラーメンだって、メンマと替え玉を追加注文すれば1杯20 ドル (約 2237円) は当たり前。仕方がないから同じものばかり食べていると、栄養不足でやつれたり、抵抗力が落ちて寝込んだりします。

さらに、仕事でも私生活でも、1秒で「言葉がわからない人」というレッテルを貼られ、身構えられてしまうレベルの英語しか話せなくても、自分の考えを主張し続け、自分は「どこの馬の骨かもわからない」者ではないことを証明できなければ、誰も足を止めて向き合ってはくれません。

もちろん、日本の家族や友人にも気軽には会えません。大切な人が亡くなったり、病気や怪我をしたり、事件や事故又は天災の被害にあっても、すぐには駆けつけられません。このために眠れずに過ごした夜は数え切れません。私にはこれが一番辛かった。

他にも挙げればきりがありませんが、このように、ビザ、お金、言語、人間関係、心身の健康などの面で、果たしてニューヨークにいる意味はあるのだろうかと自問自答させられる場面がこれほど多く訪れるとは、渡米当時は想像できていませんでした。

—それでも居たい、ニューヨーク。

では、私はなぜニューヨークに居るのだろう。9年間も居続けてしまったのはなぜだろう。

こちらでアメリカ生活の大変さを回想していたら思わず泣きそうになりましたが (笑)、ニューヨークに住んだ9年は、決して辛いことだけではありませんでした。住んでみないとわからなかったニューヨークの素晴らしさも、たくさん知ることができました。

自分の才能や技術の不足ぶりに絶望した時に、思わぬところで評価を得たり。もう終わりにしようと思った時に、思わぬチャンスが舞い込んできたり。

私個人の生活を振り返ると、そんな小さな希望の糸を必死に紡いで命綱にし、まだやろう、あと少しやろう、と思っているうちに、汚くてうるさい地下鉄にも慣れ、訛りのある英語も大声で話すようになり、チーズケーキの大きさにも驚かなくなり、マンハッタン内の自転車走行が安全な道を熟知し、1ヶ月の食費を150ドルにする節約術を覚え、キャットコールをされても物怖じせずに睨み返すようになり、ゴキブリやクモを殺すことなく窓の外に逃がす技を習得し、近所のハトたちの顔の見分けがつくようになり、気がついたら9年経ってしまった 、というのが正直な感想です。

ニューヨークは、「個」を尊重する文化があり、チャンスの扉が開いている街です。キャリアや家族の形などに関して多様な生き方を選択をしている人たちが身近にいて、「私もこういう人間になりたいな」と思わせられるロールモデルには事欠かない街です。

「個」を尊重するからこそ孤独が浮き彫りになり、チャンスがたくさんあるからこそ競争が激しく、選択肢が多いがゆえに価値観や考えが相容れない人同士が衝突します。しかし、それを補って余りある街の魅力が、きっと結果的に9年もここに居てしまったことの理由だろうと思います。

なんだかこう書くと、タチの悪い恋愛にはまるパターンの典型みたいですが、「続けていればいつか何か良いことが起こりそう」、「自分はこれだけ頑張れたのだからもう少しいけそう」、と信じられる場所が、私にとってはニューヨークだったのかなと思います。

—未来への希望と、自分への信頼を手に入れられる街。

「俳優って、自分ではやめどきがわからなくない?やめどきがわからないまま、歳だけとっちゃった俳優崩れみたいな人たち、ニューヨークにはいっぱいいるよね。」

と、かなり昔に日本人のお知り合いの一人に言われたことがあります。かなり昔すぎて、どんな適当な返事をしたかは忘れてしまいましたが、胸の奥で何かがぎゅっと締め付けられたような感覚になったことは、今でも鮮明に覚えています。

未来への希望と、自分への信頼の感覚を与えてくれるニューヨークは、私に限らず夢や目標を持ってやってくる者たちにとっては、ある意味、罪な街なのかもしれませんね。。。

来年は飛躍の年になる、来年は飛躍の年になる、とフォーチューン・クッキー (*4) に言われ続けて、気がついたら人生終わっている、というようなことにならない気がしないでもありませんが、、、

ニューヨーク10年目、私はますます元気です!

(この投稿は、8月6日のThe Huffpost Japanに転載されました。)

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(*1) 「Time’s Journey Through a Room」は、第49回岸田國士戯曲賞を受賞した岡田利規さん作「部屋に流れる時間の旅」の小川彩さん翻訳による英語版の脚本を、ザ・プレイ・カンパニー(The Play Company, The PlayCo)のプロデュースによってオフ・ブロードウェイ・プロダクションとしてニューヨークで上演した舞台。 同プロダクションは、米ニューヨーク・タイムズ紙の「Critic’s Pick(舞台批評家がオススメする舞台)」に選ばれ、その他舞台批評家の間でも好評のうちに千秋楽を迎えることができました。貴重なお時間を割いて足を運んでくださった皆様、支えてくださった皆様に、俳優として関わっただけの私からも心よりお礼を申し上げます。また、このような海外の素晴らしい作品をオフ・ブロードウェイ・プロダクションの舞台としてプロデュースし続けているザ・プレイ・カンパニーの皆様に、心からの感謝と敬意を表明いたします。

(*2) オフ・ブロードウェイ・プロダクションとは、舞台俳優や舞台監督などの組合である Actor’s Equity Association (アクターズ・エクイティ・アソシエーション、AEA、米国俳優協会) の契約のうちの「Off-Broadway Contract(オフ・ブロードウェイ契約)」が適用される舞台で、組合俳優の出演料、1日のリハーサルや休憩の時間・回数、公演期間などに厳密な規定があります。しかしながら、組合の契約が適用されず前述の規定がない舞台でも、「オフ・ブロードウェイ」とだけ呼ばれることもあるようです。

(*3) Business Insiderによると、今年のマンハッタンの平均家賃は3,667ドル (約41万円) /月 だそうです。。。

(*4) 主に中華系レストランで、食事の最後にもらえることがあるクッキー。中が空洞になっており、占いが書かれた紙が入っています。

本日火曜朝日新聞朝刊にて

本日火曜の朝日新聞朝刊「オピニオン」欄に、ハフィントン・ポストに書いた記事「大炎上した日本風オペラ『ザ・ミカド』なぜ怒りを買ったのか」が掲載されました。

The Asahi Shimbun, a Japanese newspaper with the world 2nd largest circulation of 8 million, picked up my article on the Huffington Post about the “yellowface” problem related to the recent ‘The Mikado’ cancellation. Check out their morning edition.

MIKADOonASAHI10:6出勤前の忙しい時間に紙面をスキャンして送ってくれた弟よ、ありがとう!
(注:著作権の関係で画像はぼかしてあります)

この件に関してたくさんのコメントを読ませていただいて、差別は政治的文化的な文脈の中で解釈しなければいけない、ということをあらためて考えさせられました。

日本では冗談になることが冗談にならないところに、この問題の根深い闇があるのだと思います。

わたしも日本で生まれ育った日本人のひとり。アメリカに住むアジア系アメリカ人のみなさんの話を直接聞いたり、その暮らしぶりを肌で感じたりしたことがなければ、なぜ今回の「ザ・ミカド」を多くの人が差別だと思ったか、ピンとこなかったかもしれません。

今回の騒動に関しては、実際にたくさんの人が「このミカドは差別的だ」と感じたという事実をしっかりと受け止め、理解しようとすることが、問題解決の鍵だと思いました。

☆☆☆

友人で脚本家/俳優の近藤司くんが、雑誌Penのブログに関連記事を書いてくれました。ぜひご一読あれ。
「アメリカで炎上するアジア風エンターテイメントたち」

彼のブログの他の記事も身近なトピックが新しい視点でとりあげられていて面白いのでぜひ。

☆☆☆

この辺りの関連スレッドのコメントもすごく参考になりました。

大炎上した日本風オペラ「ザ・ミカド(The Mikado)」はなぜ怒りを買ったのか

ニューヨークのシアターカンパニーである、ニューヨーク・ギルバート・アンド・サリバン・プレイヤーズ( New York Gilbert and Sullivan Players 、以下NYGASP)が、12月に公演予定だった「ザ・ミカド(The Mikado)」というオペレッタ(喜歌劇)のキャンセルを発表しました。

アジア系コミュニティを中心に、たくさんの人々からの抗議の声を受けての決定です。

☆ 「ザ・ミカド」ってどんな作品?The Mikado fb

「ザ・ミカド(=帝)」というタイトルなので日本の話かと思ってしまいますが、そういうわけではありません。

舞台は、日本をモデルにした架空の街「ティティプー」。日本人っぽいキャラクターたちが巻き起こすドタバタコメディを通してヴィクトリア時代のイギリス政府を風刺するこのお話は、ギルバート&サリバンが残した14作品の中で最も人気の高い演目のひとつです(wikipedia)。

(写真:NYGASPの公式FBページより)

キャラクターたちに付けられているのは日本人の名前ではなく、「ヤムヤム」「ナンキ・プー」など、東南アジアや中国の言葉っぽく聞こえる英語の幼児語や単なる音を元にした名前です。そんな彼らを演じるのは、日本っぽいメイクを施した白人の俳優というのが慣例。セッティングや衣装やジョークなども、西洋目線からの日本っぽさが強調されたものになっています。

とまあ、こんな感じで、日本人のわたしからするとツッコミどころが満載。もっとも、日本人や日本文化の描き方が間違っているのは当然かなという気もします。「ザ・ミカド」は、100年以上前の1885年、イギリスでイギリス人によってイギリス人のために作られました。当時のイギリスの人々にとっては日本という国のリアリティなど、おとぎ話の中の架空の国と同じ程度でしかなかったでしょう。

しかしながら、今回公演キャンセルに至った経緯を振り返ると、日本人や日本文化の解釈が間違っているのがいかん、という単純な話ではなさそうです。

☆ 物議をかもす 「ザ・ミカド」のイエローフェイス

実は、「ザ・ミカド」が物議をかもしたのは、今回が初めてではありません。2004年にはニューヨークで、2007年と09年にはロサンゼルスで、2007年にはボストンで、2011年にはオースティンで、2013年にはデンバーで、そして2014年にはシアトルで、同じく「ザ・ミカド」の公演に対する抗議運動が起こっています。シアトルの模様は全米ニュースにとりあげられて注目を集めました。

白人の俳優がアジア人の役を演じることを、俗に「イエローフェイス(Yellow Face)」と言います。もっと具体的には、アジア人っぽいメイクアップを施したり、英語にアジアなまりを加えたりすることで、アジアっぽいイメージを誇張して演じることがイエローフェイスと呼ばれます。

「ザ・ミカド」の公演スタイルを含め、イエローフェイスの是非については長年にわたって議論されてきました。

この話題を語る上でまっさきに名前があがる人物の中に、ブロードウェイ舞台「M バタフライ(M Butterfly)」でトニー賞やゴールデン・グローブ賞をはじめとする数々の賞を受賞した中国系アメリカ人脚本家のデイヴィッド・ヘンリー・ウォン(David Henry Hwang) さんがいます。彼は「フェイス・バリュー(Face Value)」(1993年)、「イエローフェイス(Yellow Face)」(2007年)といった作品を世に出したり、数々の関連インタビューに答えたりすることで、多くの人々の考えに影響を与えてきました。

☆ 対 NYSAGP「ザ・ミカド」抗議運動のインパクト

今回の抗議運動の中心になった人物のひとり、リア・七子・ウィンクラーさんにお話をうかがったところ、やわらかい物腰で以下のようなことを話してくれました。

リアさんは、9月の中頃に届いたNYGASPの「ザ・ミカド」のフライヤーを目にした途端、強烈な違和感を覚えたと言います。

黙っていてはいけない…!

そう思った彼女は、まずNYGASPに直接電話をかけて問い合わせをし、全キャスト40人中アジア人はふたりのみという事実を知らされ、このプロダクションがイエローフェイスであるという確信を得ました。

その後、1年前の抗議運動についてシアトル・タイムズの関連記事を担当したジャーナリストにすぐに連絡をとり、彼のアドバイスにしたがって自身のブログに行動を呼びかける記事を投稿。記事はSNSで瞬く間に広がり、1夜にして20,000人の人に読まれたそうです。

それを受けて、NYGASPの幹部メンバー、公演予定会場、 大手Yelpを含む複数の口コミサイトには、抗議の電話やEメールや書き込みが殺到しました。同時にリアさんのところにも心ないメッセージが届いたそうですが、それをはるかに上回る数の共感・激励のメッセージが寄せられて驚いたと言います。

彼女の周りには志を共にする10-12人ほどのメンバーが集まり、サポート体制が整いました。メンバー内で話し合い、「人種差別的な今のプロダクションではない、別の方法での公演を検討してくれないか」という要求をNYGASP宛に出そうとしていた矢先、先方から公演の全面キャンセルを決定する知らせが届いたそうです。

リアさんのブログ記事投稿から、NYGASPの公式Facebook上でキャンセルの知らせが発表されるまでにかかった時間は、わずか2日。この問題への人々の関心の高さを思い知らされる結果となりました。

the-mikado-nygasp-flyer(写真:NYGASPのフライヤーの一部。リアさんのブログより。)

☆ アメリカで直面する人種の壁

この一連の騒動を理解するには、日系人を含むアジア系アメリカ人のみなさんの暮らしぶりに思いを馳せる必要があると思います。

わたしのアジア人の友人の例を3つ出します:

  • アメリカで生まれてそこで幼少期を過ごしたAさんは、現地校に通っていた4歳の頃、鏡を見ては「わたしはどうしてみんなと違ってこんなにヘンな顔をしてるんだろう」と思いながらもんもんと過ごしていたそうです。
  • 結婚してアメリカに移住して家族と暮らしているKさんは、自分自身の似顔絵を描く8歳の娘さんが、髪色をかたくなに金髪に塗りたがることに胸を痛めていました。
  • 大人になるまでアメリカで育ったHさんは、非アジア人の子たちが、家の前まで走ってきて、中国語の音を真似た言葉を叫んで去っていく、というようないじめを子どもの頃にたくさん経験したと話してくれました。

周りのアメリカ人と見た目が違うことに悩む。アジア人だということで他の子からからかわれたり仲間はずれにされたりする。周りのほとんどが自分と同じく日本人という環境で育ってきたわたしは、幼い頃にこうした経験をしたことがありません。一方、アメリカで暮らすアジア系アメリカ人のみなさんは、幼い頃から日常的に、こうした人種の壁と向き合いながら生活しています。

楽しむために作られたエンターテイメント作品の中にも、偏見を増幅してしまう要素は存在します。

例えば映画。南カリフォルニア大学(University of Southern California)の調査によると、2013年に最も売り上げの大きかった映画100作品の中の3,932つのキャラクターのうち、台詞のあるアジア人の役は全体のキャラクターの4.4%だったそうです。この数字は、アジア人がアメリカの全人口に締める割合が約5%(wikipedia) だということを考えると妥当に思えるかもしれません。しかしながら、頭数に入っている多くのアジア人キャラクターが脇役もしくは小さな役だということを考えると、現代のアメリカの映画界がアジア系アメリカ人の現実を正しく反映していると言うことはできないのではないでしょうか。

そんな偏ったアメリカのエンターテイメントを日常的に観ているアジア系アメリカ人のみなさんが、NYGASPの「ザ・ミカド」のような舞台を観たら、どう思うでしょうか。アジア人っぽい特徴をおもしろおかしく誇張させたキャラクターたちが、アジアに関するジョークを連発する、白人だらけの舞台を観たら…。

実際に何が起こったかは前述の通りです。

☆ 政治的な正しさ(PC)と「ザ・ミカド」のこれから

エンターテイメント作品を発表するときは、差別的な偏見を拡散しないように気をつけなくてはいけません。そうでないと、多くの人に受け入れてもらえません。

差別的でないことを表す言葉を、アメリカでは「政治的に正しい」=「ポリティカリー・コレクト(Politically Correct)」、略して「ピー・シー(PC)」と言います。一般的に、多様な人種や文化が混在するアメリカのメディアは、PCの厳しい水準を持っています。

今回のNYGASPの「ザ・ミカド」は、PCの視点が欠落していました。その結果、アジア人への差別的な偏見を増幅させるものと受け止められ、多くの人の怒りを買ったのです。

SNSが発達し、少数派の意見が表面化されやすくなった今、PCを考慮せずに作品を世に出すことは難しくなりました。SNS的なコミュニケーションの形はますます発展するだろうと考えられるので、この流れはこれから先もっと強くなるでしょう。

では、PCを考慮しなければいけない中で、人気歌劇である「ザ・ミカド」はどのように演じられていくべきなのでしょう。

キャストをアジア人中心にすればいいのでしょうか(過去のミネアポリスのプロダクションでは実際にそのように演じられました)

物語の舞台である架空の街から、日本っぽい要素を除けばいいのでしょうか。

そもそも「ザ・ミカド」はもう演じられるべきではないのでしょうか。

いろいろな意見が飛び交っていますが、PCの基準は社会の動きやそこで暮らす人々の価値観とともに変わるので、その時代と場所にあった答えをひとつひとつ出していくしかありません。

「わたしたちは、会話を求めていました。」

とくに印象に残ったリアさんの言葉です。

今回は、双方が話し合いをする前に、NYGASPが率先して公演をキャンセルするという結果になりましたが、違和感を率直に先方に伝えることで会話のきっかけをつくり、建設的な解決法を導きだそうとしたリアさんの姿勢には多いに賛同します。

11月にはニューヨークでリアさんたちを中心とした複数の団体が力を合わせ、「ザ・ミカド」の今後や今回の出来事の社会的な重要性を話し合うコンファレンスが開かれる予定だそうです。わたしも一緒に考え、会話に参加してこようと思います。

(この投稿は、9月30日の The Huffington Post に転載されました。)

映画「Jurassic World(ジュラシック・ワールド)」からのグリーンカード語り

ずーっと前から公開を楽しみにしてた「Jurassic World」をさっそく観てきました!

せっかくだから話題の iMax 3D で観なきゃだぜ!と思い、朝9時にお友達のYurikoを呼び出して、ニューヨーク市内のAMCの中でiMaxのスクリーンが一番おおきいというリンカーンセンターの映画館に行ってきました。

もうね、最高に楽しかったです iMAX。アイマックスばんざい。てくのろじーバンザイ。始めから終わりまでジェットコースターに乗っているみたいにワーキャー叫びながら突っ走りました。終わった後の燃え尽きて灰になった感ハンパない。頭まっしろになります。

後から思い返すとストーリーやキャラクターに関してはいろいろと突っ込みどころ満載なのですが、観ている最中は、ワクワクどきどきハラハラしっぱなしで、目やら心臓やらが内側から何度も飛び出てくるのを抑えるのに必死で、それどころじゃありませんでした。

みなさまもぜひ、この機会にあいまっくす映画館へゴーゴーゴー!!

…ところで、iMAX 3Dと普通の3Dの違いをご存知の方いますか?

そもそもiMAXってなぁに?

JWwithYuriko

そうそう、ご一緒したYurikoはニューヨークで俳優/ダンサー/シンガーとして活躍している心強いお友達のひとりなのですが、最近グリーンカードをとったそうです。

彼女の苦労話や情熱に心を動かされた勢いにのって、アーティストグリーンカード(EB-1永住権)&アーティストビザ(O-1ビザ)についての投稿をハフィントンポストに公開しました。

The Huffington Post
「アーティストグリーンカード(EB-1永住権)申請当時に誰かに教えて欲しかったこと」Screen Shot 2015-06-22 at 7.58.38 AM

せっかくなのでYurikoのかっこいい写真を使わせてもらった。

オリジナルの投稿(今回のために一部アップデートしました)は1年以上前に書いたのに、いまだにたくさんの方が読んでくださっているようで、日本人アーティストのみなさまの、アメリカ進出へ関心の高さがうかがえます。

今回お話ししたことはあくまで個人的な経験に基づくものですが、わたしなりに一生懸命取り組んで学んだことの中から、読者のみなさまにとって役に立つことが何かひとつでも見つかったとしたらうれしい限りです。