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アカデミー賞に向けて盛り上がるアワードシーズン。権威ある賞の存在意義と、サグ・アワード

OscarBestParentsハリウッドのお土産屋さんで人気のオスカー像

米アカデミー賞(通称:オスカー)のノミネーションが公式に発表されましたね。

毎年、年末から翌年の3月までは「アワードシーズン」と呼ばれ、数々の権威ある賞のノミネーションや受賞が、時期を見計らった絶妙なタイミングで次から次へと発表され、アメリカの映画界、テレビ界は活気にあふれます。そのトリを飾るのが、皆様もご存知のアカデミー賞。

この一連の流れのおかげで、前回少し触れたゴールデングローブ賞や、全米製作者組合(PGA)賞などは、それ自体に権威があるだけではなく、アカデミー賞の前哨戦と呼ばれて注目されています。

 

アワードシーズン、権威ある賞の存在意義

数々の権威ある賞が存在することは、映画界を盛り上げ、映画作品の質を向上する大切な役割があると感じます。

アメリカは資本主義。こうした賞がないと、映画は観客数や興行成績などの数字で評価されてしまいます。つまり、「売れた映画」のみが注目され、「売れる映画」のみが制作されるようになるでしょう。

エンターテイメントも「ビジネス」ですから、売れるためのプロモーション要素は大切です。しかし、映画などの映像作品は一種の芸術であることを考えると、ストーリー、脚本、監督、演技、編集、美術、音楽など、作品としてのクオリティよりも「売れるかどうか」がまず優先されてしまう環境では、良い作品は生まれてきませんね。

多大な予算をかけて、超人気監督に依頼し、超人気俳優を起用し、巷で大ヒットした原作を映画化すれば、多くの観客が映画館に足を運ぶことでしょう。しかしながら、「低予算の映画」「超人気監督も超人気俳優もいない映画」「人気の原作がない、またはオリジナル脚本の映画」など、プロモーション要素が比較的弱い映画でも、素晴らしい作品であれば、世界中に数々の賞が存在するおかげで、多くの人の目に触れるきっかけを得ることができます。

もちろん、「良い映画」の定義は、条件、状況、観る人それぞれよって異なりますので、賞をとる映画=良い映画だと一概には言えません。そもそも製作者たちが魂を削って生み出した芸術作品に優劣をつけるのはナンセンスです。

しかしながら、数々の権威ある賞が存在し、観客数や興行成績とは別の基準で映画を批評できるシステムが整っていることが、映画作品全体のクオリティ向上に貢献するという点はやはり見逃せません。

作品が世に出るきっかけとなるだけではありません。権威ある賞の存在が、受賞者の今後のキャリアアップに多大なインパクトを与え、さらに、受賞によって得られる名声や誇り、他人からの尊敬が、より良い作品を生み出そうというモチベーションや努力に繋がります。

努力して生み出した作品が評価され、その評価が本人や周りに影響を与えてさらに良い作品が生まれ、というポジティブな連鎖が、明日の映画界を支えていきます。

 

俳優の、俳優による、俳優のための賞、サグ・アワード(SAG Awards)

SAGAwardsWinners2017( 写真はFacebookより)

我らが映画俳優組合(Screen Actor’s Guild、通称「サグ(SAG)」)もサグ・アワード(SAG Awards)という賞を設けており、オスカーを頂点にした賞レースにおける前哨戦のひとつとして注目されています。こちらの授賞式が先週の日曜、21日に行われました。

サグ・アワードは、サグに所属するすべての組合員が投票権を持ち、候補作品としてノミネートされた作品群の中から、各カテゴリーで賞にふさわしいと思う作品にそれぞれ投票することで選出されます。

俳優の、俳優による、俳優のための賞、それがサグ・アワードです。

実はわたくし、今年はサグ・アワードの候補作品をノミネートする委員会(ノミネーション・コミッティー)のメンバーに選んでいただきました。そのおかげで昨年末、2017年リリースの映画を一気に鑑賞させていただいたので、せっかくなので少しだけ私見を。全体的に今年は、

  • 「強い」女性が主人公の作品:「Three Billboards Outside Ebbing, Missouri(邦題「スリー・ビルボード」)」「Battle of The Sexes」、「The Post」「Wonder Women(邦題「ワンダーウーマン」)」など
  • 主要キャラクターの人種に多様性のある作品:「The Big Sick(邦題「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」)」、「Victoria & Abdul」など
  • 実話を元にした作品:「Disaster Artist」、「Darkest Hour(邦題「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」)」、「I, Tonya(邦題「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」)」など。「Battle of The Sexes」「The Big Sick」「The Post」も実話ベース

の躍進が目立ったように思いました。政治や社会情勢が反映されているからでしょうね。

優劣のつけようのない素晴らしい作品ばかりでしたが、総合的に映画としての完成度が高く、独断と偏見でおすすめするのは、

  • 「Three Billboards Outside Ebbing Missouri」:前回投稿参照。出演したから言ってるのではなく、とにかく面白い!(邦題前述)
  • 「Mudbound」:人種差別の根強く残る第二次世界大戦中&戦争直後のミシシッピを舞台にした2つの家族の物語。(邦題「マッドバウンド 哀しき友情」)
  • 「I, Tonya」:フィギア界の歴史に残る、トーニャ・ハーディーに関連するスキャンダルを基にした物語。(邦題前述)

などです。また、映画を観ている際、特殊メイクの辻一弘さん(「Darkest Hour」)や、編集のMako Kamitsunaさん(「Mudbound」)など、素晴らしい仕事ぶりのクレジットに日本人のお名前を見つけた時は、誇らしかったし、励まされるような気持ちになりました。

俳優たちの間でアワードシーズンが毎年大きく盛り上がるのは、同業者として演技や映画製作に対する敬意と理解があることに加えて、組合員の俳優みんながシーズンの中でも特に重要な賞のひとつに関与できることで生まれる一体感のおかげかもしれません。

第90回アカデミー賞の発表は、2018年3月4日です!

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2つの事件

今週はマンハッタンで悲しい事件が2つありました。

1つは、日本でも報道された通り、火曜日の午後、ロウワーマンハッタンの川沿いの自転車&歩行者専用レーンにトラックが突っ込みました。8人が死亡、11人が負傷したことがこれまでに判明しています。被害者の中には、卒業30周年アニバーサリーを祝うためにニューヨークを訪れサイクリングを楽しんでいた、アルゼンチンからの男性グループもいたそうです。

もう1つは、水曜日の朝、通勤時刻の真っ最中に、イーストビレッジで起きた銃発砲事件。以前交際のあった男性から撃たれた女性が亡くなり、直後にその男性も自殺を図ったようです。女性は通勤に使ったシティバイク(※)をアスタープレイスのステーションに駐輪しているところだったそうです。

※市内の路上に無数にあるステーション間で、セルフサービスで自転車を乗り降りできる自転車シェアのプログラム。

citybikeafterthe shooting

事件のあったステーションの、撃たれる直前に被害者の女性が駐輪したと思われるバイクの隣には、たくさんのお花が添えられていました。シティバイクは誰でも自由に借りられますが、きっと一昨日から誰もこのバイクには乗っていないのでしょう、、、

被害者、関係者の方々は辛い時間を過ごされていることと思います。

9月19日付朝日新聞朝刊にて

先日ハフポストに投稿した「初めてのヘアドネーション(髪の毛の寄付)」の紹介記事を、朝日新聞さんが2017年9月19日付の朝刊で掲載してくださいました。朝日新聞デジタルでも読めます。
MahoAsahi
条件はそれぞれ違いますが、日本にもアメリカにも寄付先は複数あることを今回ドネーションをするにあたって改めて知りました。みなさま、髪の毛をばっさり切る際には、ぜひヘアドネーションを選択肢に入れていこうではありませんか。

My article about hair donation is now published on The Asahi Shimbun, a Japanese newspaper with the world 2nd largest circulation of 8 million. Check out their morning edition TODAY :)

初めてのヘアドネーション(髪の毛の寄付)

歳を重ねたせいか、アメリカに来たカルチャーショックのせいか、昔はコンプレックスだった自分の色々なことが、どんどん気にならなくなっている。むしろ好きになったことだってある。その代表が、髪の毛だ。

わたしの髪の毛は、黒くて、太くて、多くて、まっすぐ。コテで巻いても、「長時間キープする」「スーパーウルトラハード」のヘアスプレーをべったりとふりかけても、数時間後には元の状態に戻ってしまう。どれだけ「スキバサミ」ですいてもらっても膨らむし、本流から外れたいわゆる「アホ毛」さえも直毛で、生えたままの方向へと強力に伸びるものだから、上に横にと収拾がつかない。

女性らしいスタイルがキマる猫っ毛がいつも羨ましくてしょうがなかったので、高校時代から何度も脱色したりパーマをあてたりしてみたけど、アメリカに来てお金がなくなったと同時に、「これは巷で人気の無造作ヘアだから大丈夫」と自分に言い聞かせ、手をかけるのをやめてしまった。

そんなわたしの髪の毛が、役に立った。

僭越ながら、ウィッグにして使っていただくべく、髪の毛を寄付(ヘアドネーション)したのだ。

募金のように頻繁にできる寄付ではなく、条件も限られるが、寄付をする側の負担が少なく、初めて寄付をするにあたって思っていたよりもずっとハードルが低かったので、ブログに書き残しておく。

わたしが寄付先として選んだのは、日本でもシャンプーなどの商品でおなじみの「パンテーン(P&G)」が2006年から行っているパンテーン・ビューティフル・レングス(Pantene Beautiful Length)というプログラム。

https://pantene.com/en-us/brandexperience/about-the-program

今までにアメリカとカナダの人々から集まった髪の毛で5万以上のウィッグを作り出してきたこちらのプログラム、アメリカがん協会(the American Cancer Society®)、カナダがん協会(Canadian Cancer Society)と組み、ガンによる闘病の過程で髪の毛を失った大人の女性たちのためにウィッグを無料で提供している。

長さ8インチ(20.32cm)以上、白髪が5%以下、脱色や染色、その他化学処理をしていない髪、というのが寄付できる髪の毛の条件だ。

PanteneHairRequirement

(英語での条件はこちら

パンテーンのサイトには、寄付までの手順と注意点がひとつひとつわかりやすく書いてある。せっかくの髪の毛をウィッグにしてもらえないと悲しいので、しっかりと予習してから実行しよう。(英語ではこちら)

Howtomakethecut

  1. 髪の毛をキレイにする。シャンプーで洗い、コンディショナーもOK。ヘアスプレーやスタイリング剤はNG。
  2. 髪の毛を1つにまとめる。(複数にまとめた方がいいみたいです!)
  3. ゴムで結び、ポニーテールを作る。
  4. ポニーテールは、切りたいラインの少し下にゴムが来るように確認。
  5. ポニーテールの長さを測る。8インチ以上であることを確認。
  6. 髪の毛がバラバラにならないように、ゴムの少し上をハサミで切る。
  7. ゴムでまとまった髪の毛の束をジップロックに入れ、しっかりと閉める。この時、髪の毛がしっかり乾いていることを確認。
  8. 髪の毛の束をクッション付きの封筒に入れ、こちらの住所に郵送する。
    Pantene Beautiful Lengths
    Attn: 192-123
    806 SE 18th Ave.
    Grand Rapids, MN 55744
  9. また伸びるまで待って、1へ戻る。

確認したら、さっそく輪ゴムとジップロックを持参して、ヘアサロンへ。

HairDonationBefore

断髪直前。

約2年間切っておらず、髪の毛の長さはウエストくらいだった。

ポニーテールにまとめる過程でゴムが何本もちぎれるし、ある時はゴムを解くと髪の毛の束の中で小さなムシが死んでいるのを発見(富士の樹海かと)、今しかないと決断。他にも、髪の毛が肩掛けバッグの持ち手に絡まって後ろを振り向けなかったり、寝てる時に首に巻きついて悪夢にうなされたりして、ロングヘアは何かと大変だということを学んだ。

HairDonationRightAfter

断髪直後。

9インチ(23cm)くらい。根元を輪ゴムで止めてその上にハサミを入れてもらった。ここでゴムの下を切ってはいけない。髪の毛がバラバラになるとウィッグとして使えないからだ。スタイリストさんは、「ヘアドネーションをするためにこうして髪の毛を束ねて持って帰るお客さんはけっこういますよ。」とおっしゃり、ポニーテールを3つに分けて切ってくれた。その後残った髪の毛は普通に切って整えてもらった。

HairDonationSent

持って帰って、封筒に入れて、郵送して完了。切り方をよくご存知のスタイリストさんのおかげで、初めてでも簡単だった。HairDonationAfter

YAMA
6 Spring St
New York, NY 10012
917-475-1283
http://yamahairsalon.com

(→散髪直後。スタイリストのMayuさん、ありがとうございました!)

先日、撮影のヘアメイク中に髪の毛の話になって、メイクさんが「アジアの女性の髪の毛は丈夫で羨ましいわ。あなたのも喜ばれるわよ。グッジョブ!」と言ってくれて、黒くて太くて多くてまっすぐの「丈夫な」髪の毛が嫌いだった身としては、素直に嬉しかった。脱色とパーマをやめたことも、意外なところで役に立った。

抗がん剤治療をしていた女友達が身近にいたので、ほんの小さなことだけど、髪の毛が伸びたら寄付したいとずっと思っていたのだ。闘病はそれ自体が本当に大変。ウィッグで、気持ちだけでも、少しでも、明るくなれるといいなと願う。

また伸びたら寄付したいな、と思える良い経験でした。

☆☆☆

「8インチ以上の髪の毛であれば受け取ってくれること」「大人の女性用のウィッグとして使われること」が今回わたしがパンテーンのプログラムを選んだ決め手になったが、寄付先は他にもあって、条件も様々。最低12インチ以上の長さが必要なところもあるし、集まった髪を子供用のウィッグを作るために使うところもあるし、白髪や脱色染色した髪の毛でも受けとってくれるところもある。ご興味のある方は、使用用途、ご自身の髪のタイプ、どのくらいの長さを切れるか・切りたいか、によってぴったりの寄付先を選ぶと良いだろう。

その他の寄付先の例:

ーLocks of Love
http://www.locksoflove.org

闘病で髪の毛を失ったアメリカ&カナダ在住21歳以下の方々のためのウィッグ用。寄付を受け付ける髪の毛の長さは10インチ(25.4cm)以上。染色やパーマをした髪の毛、白髪はOK。脱色した髪の毛はNG。

ーWigs for Kids
https://www.wigsforkids.org

ガン、火傷、脱毛症などによって髪の毛を失った子供たちのウィッグ用。長さ12インチ(30.48cm)以上。白髪はOK、カラー、パーマはNG。

ーJapan Hair Donation & Charity (日本)

https://www.jhdac.org/

病気が原因で頭髪を失った子供たちのウィッグ用。長さ31cm以上、極度に痛んでなければOK。

他にもたくさんあります!

(この投稿は、2017年9月14日ハフポストジャパンに一部改訂して転載されました。)

本日火曜朝日新聞朝刊にて

本日火曜の朝日新聞朝刊「オピニオン」欄に、ハフィントン・ポストに書いた記事「大炎上した日本風オペラ『ザ・ミカド』なぜ怒りを買ったのか」が掲載されました。

The Asahi Shimbun, a Japanese newspaper with the world 2nd largest circulation of 8 million, picked up my article on the Huffington Post about the “yellowface” problem related to the recent ‘The Mikado’ cancellation. Check out their morning edition.

MIKADOonASAHI10:6出勤前の忙しい時間に紙面をスキャンして送ってくれた弟よ、ありがとう!
(注:著作権の関係で画像はぼかしてあります)

この件に関してたくさんのコメントを読ませていただいて、差別は政治的文化的な文脈の中で解釈しなければいけない、ということをあらためて考えさせられました。

日本では冗談になることが冗談にならないところに、この問題の根深い闇があるのだと思います。

わたしも日本で生まれ育った日本人のひとり。アメリカに住むアジア系アメリカ人のみなさんの話を直接聞いたり、その暮らしぶりを肌で感じたりしたことがなければ、なぜ今回の「ザ・ミカド」を多くの人が差別だと思ったか、ピンとこなかったかもしれません。

今回の騒動に関しては、実際にたくさんの人が「このミカドは差別的だ」と感じたという事実をしっかりと受け止め、理解しようとすることが、問題解決の鍵だと思いました。

☆☆☆

友人で脚本家/俳優の近藤司くんが、雑誌Penのブログに関連記事を書いてくれました。ぜひご一読あれ。
「アメリカで炎上するアジア風エンターテイメントたち」

彼のブログの他の記事も身近なトピックが新しい視点でとりあげられていて面白いのでぜひ。

☆☆☆

この辺りの関連スレッドのコメントもすごく参考になりました。