女性がニューヨークの路上で受けるセクハラ実録ビデオ「10 Hours of Walking in NYC as a Woman」の波紋。

反ストリート・ハラスメント(Street Harrasment=路上での嫌がらせ)の活動コミュニティ、ホラバック(Hollaback!)のYouTubeビデオが話題になっています。

「10 Hours of Walking in NYC as a Woman(女性としてニューヨークを歩いた10時間)」と題された約2分のビデオです。公開から4日目の今日ですでに約2700万回が再生されているので、ご覧になった方も多いのでは。

内容は、ジーンズ+Tシャツ+スニーカーというカジュアルな格好の若い女性が、ひとりでニューヨーク市内を10時間ひたすら歩く、という実験を録画したもので、その結果、見知らぬ男から、「ヘイ、ベイビー!」「ご機嫌いかが?」「ビューティフル!」「ナイス!」「セクシー&*%$!」「笑って!」 など の「cat call(キャット・コール=セクハラやじ)」を浴びせられる様子が映っています。その数100件以上だったそう。

加えて、ウインクや口笛など態度でのアプローチが数えきれないほどあったと言います。

中には、黙々と歩く彼女に対して、「『ビューティフル』って言ってあげてるんだから『ありがとう』くらい言えないのか?」「オレが不細工だから無視するのか?」などと因縁をつける者もおり、5分間もしつこく付け回すちょっと怖い男の姿も映っています。

このビデオに対して、「ただフレンドリーに話しかけてるだけの男性もいるじゃないか!これもセクハラなんてあんまりだ!」「過敏に反応している奴らは自意識過剰だ!」等の一部の意見があります。しかし、多大な再生回数や大量のコメントからも明らかなように、「路上では一切のキャットコールを受けたくない」「路上で男性に話しかけられるのは怖い」という(主に)女性もこんなにたくさんいるという事実をまずは受け止めて欲しいなと思いました。

もちろん、適切な「見知らぬ他人とのフレンドリーな交流」は大歓迎という人は多いと思います。それが、多様性の街ニューヨークのよさでもあると思う。

これに関しては言葉自体じゃなく行間の問題。「綺麗だね」などの「ぱっと見褒め言葉」や、「ご機嫌いかが?」などの「ぱっと見無害な言葉」も、十分パワフルなハラスメントになり得ることを訴える意見が多く見られます。

思うに、この「フレンドリーな呼びかけ」が下心なくただフレンドリーなだけならば、男性と一緒にいるとき含めいつでも受けていいはずです。ですが、その「フレンドリーな呼びかけ」のほとんどが、ひとりまたは女性同士で歩いているときにしか受けないのが現状。

Hollabackの2012年の統計によると、ストハラの75%が男性がひとりの女性をターゲットにしたものだったそうです(参考レポート)。

さらに、発する側が自分たちは「フレンドリー」だと思い込んでいる場合、このビデオの一部の男性たちのように、受け取る側もフレンドリーに返すべきだという態度でやってきがちなのでたちが悪い。

きちんと敬意を払った本当にフレンドリーなアプローチと、自分より立場の弱い(主に)女性に一方的に言葉をぶつけて注意を引こうとするキャットコールは、まったくの別物です。

また、ビデオに出演した女性は、一部の視聴者から脅迫のメッセージを受け取っているとメディアに告白しています。

この反応こそが社会にはびこるセクシャル・ハラスメントの実態を物語っていますが、それと同時に、男女平等を訴えるフェミニズム=「男嫌いのクレイジーな過激派」 というネガティブなイメージが出回っていることも無関係ではなさそう。

思うに、性とか食といった生きることに直接関わるエリア(男女平等、同性愛、食肉など)の改革は、それによって今までの価値観が否定されたり行動を制限されたりする人の、本能的な恐怖というか、禁忌に触れてしまうんじゃないか。だから過激派がエスカレートしたり、感情優先になって議論が成り立たなかったりするんじゃないか。

こういう話題こそ、大勢に伝えるためには個人的感情をぐっと抑えて事実や統計を筋道立てて淡々と説明しなきゃいかん、、というのを先日とあるデモに参加して色々な人と話す中で感じたのですが、その話題はまた機会があれば。

少しそれたので本題。

ニューヨークは素晴らしい街ですが、こうしたセクハラやじ/いやがらせを受けることは日常茶飯事です。

わたしも、バイク移動になってからは減りましたが、たまに徒歩になると「あーそうだった」と思い出します。人種や年齢や服や顔身体のタイプに関係なく、周りにも同じ経験をしたという人を多く知っています。もっと直接的で汚い言葉も飛び交っていますし、無視しようものなら前述の「なんちゃってフレンドリー」な方々から罵倒されたりもします。

しょうがないので、夜遅く出歩かない、男たちのたまり場を避けて通る、人と目を合わせない、などの一般的な自衛は心がけていますが、不快な思いをすることが減ればどれほど気が楽か。

ビデオ公開後に、「わたしや周りの女性も経験しているこの現実をみんなに知って欲しい。」「わたしも実はずっとイヤだったの!」「わたしも!」「わたしも!」と、こんなにたくさんの人々が一気に声を上げたのはすごいと思います。議論の場を提供してくれたという点で、このキャンペーンは社会的に大きな意味があったと思われます。

ちなみに、こういったストリート・ハラスメントは、女性一般だけでなく、有色人種、LGBTQ、若い世代など、いわゆる「マイノリティ」の人々に起こりやすい傾向があるそうです。みんなで考えていければいいですね。

ひとりの意見では実質何も変わらなくても、それがたくさん集まって風潮のようなものになると、既存の価値観や常識を変えられるかもしれない。そういう希望や心強さを、このビデオと一連のバズを見て感じました。

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