月別アーカイブ: 2013年1月

お子様にはキケンなダニエル

寒くて作業がはかどらないので、現実逃避をしよう。

先日、Daniel(http://www.danielnyc.com)という老舗フレンチレストランに連れていっていただく機会があった。

ボーイさんの100万ドルの笑顔を受けて入り口をくぐると、コートチェックと、ええ感じの薄暗さが会員制クラブ感たっぷりのラウンジが続き、バスローブを着てウイスキーを片手でくるくるするのが似合いそうなカップルたちがソファーに座って談笑している。金曜の夜なので、ずいぶん混んでいたようだ。

「で、あなたは、どちらのVIPさん?」という仲間意識とも対抗意識ともとれる視線がバババッと体中に突き刺さり、次の瞬間にはすっと通過する。

こういうときこそ、ビシッと背筋を伸ばして歩かねばいかん。

レーガン大統領夫妻もホワイトハウスから飛んでくる常連だったというから、きっと有名人がくることも多いのだろう。そう考えると「なんだ、パンピーかよ」という視線だったのかもしれない。

ダニエルにはドレスコードがある。ウェブでは「Dress Code: Jacket Required」と書いてある。

じゃあジャケットを着ない女性は?ブーツはOK?外用コートはダウンでもいいの?

いろいろ?が出てきて心配だったので、このブログではおなじみの毒舌アートディーラー・さっちゃんに聞いてみた。NY歴の長い彼女によると、ジャケット着用のフォーマルが要求される高級レストランでも女性はかなり服装の許容範囲が広いらしい。

さ「要はきちんと見えればいいのよ。ブーツでも全然おっけーだし、コートはどうせ脱いじゃうから何でもいいわよ!」

結果、ダイアンのカクテルドレスを着て、パテントのパンプスを履きました。

フタを開けてみると、結婚式2次会的ドレスはもちろん、おしゃれピクニック的ワンピでも、オフィス的スーツでも女性は全然浮かない雰囲気であった。従業員たちはとても感じがよく、上下ジャージで行ったら逆にスターだと思われておっけーかもしれないと思わせる包容力があった(多分ダメです)。

料理は大変おいしく、合間に前ぶれなくどんどん出てくる一口料理やフカフカのマドレーヌに感動しつつ、締めに何ヶ月ぶりかのおコーフィーをいただいて夢心地。ZAGATはほぼ満点、ミシュランでも星3つを取るくらいに料理は洗練され尽くしているので、ここで稚拙なボキャブラリーで味を表現しようなどという無駄な努力は省略する。とにかくすごかった!!!

daniel-nycEADIM-Daniel-NYC-07ウェブサイトより

どれくらいすごかったかというと、5日後くらいに来るはずだった女性周期がダニエルの翌日にうっかり来ちゃうくらいだったのだ。

おいおい。どんだけ興奮したよ。もとい、どんだけ食べたよ。

心も体も骨抜きの放心状態にしてくれる三ツ星ディナーは、ホルモンバランスにまで影響を及ぼすらしい。とりあえず妊婦さんは注意です。

ほどよく冷静を装うことでより大きな怒りをあらわにするアメリカ人たち

またお湯と暖房が止まった…。

どうやら、ON/OFFスイッチがどうこうということではなく、ビル全体の灯油タンクがほぼ空の状態らしい。しかも、これまでの灯油に対しても、未払い分への請求書が立て続けにきているらしい。

それじゃあまた当分このままじゃないか。また、中華鍋で頭を洗わなきゃいけないのか…。

ニューヨークは零下が続く極寒。今回はさすがに警察も来たし(またかよ)、寒さに凍えるテナントたちのメーリングリストは大騒ぎになっている。

しかし、「さむい、さむい」と嘆いても冷えるだけなので、今回は怒り狂うテナントたちのメールから、日常会話に役立つ生の英語表現をピックアップしてみよう。

★ I just wanted to be clear that I’m already past my end with this.

「ただこれだけははっきりしておきたかったんだけど、オレさ、とっくに堪忍袋の緒が切れてるんだよね。」

「just」のところにポイントを置いて、これだけは言わしてもらうよ!と怒りを強調。「wanted」と過去形になっているのも、「今まで我慢してましたけど」的なニュアンスを出して強調するのに効果的。

★ I confess I’m growing disgusted with the whole process.

「ぶっちゃけ、ぜんぶに対して反吐が出そうなんですけど。」

もう完璧に反吐は出きっていると思われるけれど、「growing(〜しつつある)」とすることで、かろうじて分別のある大人の尊厳を保とうとしておる。SVCの英文構造のバリエーションである。

★ With all due respect to our counsel, The idea of entertaining any thought of compromises with(大家のばあさんの名前) and her team is preposterous.

「顧問の先生に敬意を払いつつ言わせてもらうけど、大家のばーさんとその仲間たちに妥協しよっつー考えを支持するなんて、マジありえないから!!」

キレッキレのギャルお風でどうぞ。

「WIth all due respect 〜」は、その後の表現を柔らかくするのに便利な言葉。自分はあなたの頭の中も今の状況もすべてわかった上で発言していますよ、と提示して相手の逃げ道を塞ぐのである。敬意があろうがなかろうが言った者勝ちなので、少しばかり乱用されてる感もある。これを相手が言った直後にはほぼ確実に反対意見や攻撃が来るので心の準備をしよう。「entertain」には、「楽しませる」だけではなく、「(好意的に)受け入れる」という意味がある。

はい、寒いのでもう寝ます。おやすみなさい。

決戦の金曜日!のオーディション

受ける側ではなく、選ぶ側でした。

わたし個人のホームページにはだいぶ前から載せているのですが、実は今、日本向けのウェブドラマのプロデュースに関わっています。

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そこで、雪の降りしきる先週の金曜は、そのドラマのための追加キャストのオーディションでした。

演技を披露してくださった俳優の皆様、関係者の皆様、お忙しい中どうもありがとうございました。

現在、いろいろな要素を考慮しながら選考中です。

人気の俳優データベースにキャスティングの告知をしたのがオーディションの1週間ほど前。個人で応募してきた俳優が4割、エージェントからが6割という感じ。

ニューヨークに住む労働許可を持った俳優限定なので、日本人役はそれなりに吟味できる応募数でしたが、「オプラさんみたいなブラックの凄腕女弁護士」や「ウッディアレンさん的神経質な白人の大家さん」になると、気をつけてタイプを限定したにも関わらず、2日ほどで600以上の応募が来ました。

オプラやウッディが同じ街にこんなにいるわきゃないだろうに…でもくるんです。

ちなみに一番応募人数が多かったのは、前回オーディションでの「アルコール中毒の白人美人図書館司書」キャラクター。一気に2000越え!

満面のしかめっ面で選んでいたら、スクリーンが歪んで見え始めました。め、めまい…がぁぐはっ。これほどたくさんになると、正直言って、全員のレジュメと写真を見てしっかり選考するのは無理。

こうしてキャスティングを反対側から見てみると、ニューヨークでの俳優の競争率の高さに心が折れそうになります。

オーディションを受けさえすればとれる可能性のある仕事でも、第一次のヘッドショット&レジュメ審査のときにうっかりスルーされちゃうことは多々あるんだな、ということがわかります。

しかしながら、希望はある!オーディションに呼んでもらう確立を上げるため、俳優&キャスティングディレクター双方の時間を尊重するために少なくともできることは、

1)自分の年齢、タイプ、人種、性別にふさわしい役に応募する!
(これ当たり前だけどいちばん大事)

2)修正がごりごりに入っていない最新のヘッドショットを添付する!

3)プロフィールに自分のビデオをアップする!

という感じでしょうか。「どんな役がやりたいか」という自分側の希望と、「どんな役がふさわしいか」という相手側の希望を、別のものとして把握することがだいじかと。

ウェブドラマの今後の経過については、またぼちぼちアップしていきますので、お楽しみに。今後とも、どうぞよろしくお願いします。

霊能力者なポスター

Flesh for the Beast Bible Coverこの年末にトレイラーを撮った、新しいウェブシリーズのポスターが出来ました。

わたしの役は、主演の霊能力者 Tsukikoです。けっこう大胆なことをします。ただ今、ロサンゼルスのプロデューサー/スポンサー陣に向けて絶賛プロモーション中らしい。

今日のニューヨークは、マイナス12度(体感18度。シベリアか!)という殺人的な寒さ。自転車に乗っていると、自分の体が外側からはがれていくように痛かったです。

でも、雪の降る中、ひらひらの服で墓場を徘徊したこのときの撮影を思えば、まだマシでした。空気がビシビシ刺さって鼻水と涙が垂れてくるのに、皮膚の感覚が麻痺してるから気がつかないくらいだった。あれは何度ぐらいだったのか。

しかも、それら野外で撮った写真はボツになり、グリーンスクリーン(※)で撮ったほうがポスターに採用されたという…。ま、そんなもんです。

※写真でも映像でも、後ほど背景を合成するためには、緑一色の背景を使うのが一般的です。

目の前の犯罪

ぐっと気温が下がったニューヨークの夜8時半。「おーォぅまいがぁぁァァ〜…ぉまいガ〜〜〜」という、薄笑いのまじった、まったりとして甲高い女の声が50回ほど寒空に響き渡ったとき、わたしの中でも「ぶっちぃーん!」と堪忍袋の緒が切れる音がした。いや,むしろ「ぶっちーん」と叫びましたよ、ええ。

ただでさえ頭から煙の出そうなデスクワークをしていたから、たまったもんじゃない。オーマイガー女に「プリーズ 静かにしろー!」と叫ぼうと思い、ガババッと勢いよく窓を開けた。

…と、パトカーが道に3台連続して停まっており、その声の元に警察官たちがわさわさと集まってきているのがみえた。

どうしたんだこれは??

その数分後、とんとんとん、とドアをノックする音。

チェーンをかけて5cmほど恐る恐る開いたドアの先には、ひとりの警察官が立っていた。IDを確認して本物だとわかると、チェーンを外してドアを開けた。

「何か変な物音を聞かなかったか?」

ーオーマイガーって甲高い声が100回くらい聞こえたよ。

まわりの住人たちも集まってきた。

ーオレも聞いた。若者がふざけ合っているのが聞こえたぜ。

ーいつものように酔っぱらいが叫んでるような感じだった。

警察は、誰が通報したのかわからないので、ビルの住人に詳しい前後関係を聞きたいらしかった。オーマイガーと繰り返していたその女性は、英語が話せず、自分の名前が思い出せず、目すらも開けられない状態だというので、困り果てていたのだ。彼女が何かのドラッグをやっているのは明らかだ。

その後、住人たちの目撃例から、知り合いなのか通りすがりなのか、ひとりの男が、ヘロヘロな彼女を力でどうにかしようと迫っていたらしいということがわかった。

わたしの住むこのエリアの治安は決して悪くない。ヒップスターな若者たちが集い、雰囲気は日本で言う原宿みたいな感じ。警察も頻繁にパトロールしてくれているし、ときに耳栓をしないと眠れないくらい、かなり遅くまで賑やかで人通りの多いエリアだ。

深夜に、奇声、歌声、ケンカ声が聞こえるのは日常茶飯事なので、みんな例の「オーマイガー」もそのひとつとして片付けてしまっていたようだ。自分の窓の真下、道のど真ん中で強姦未遂とは…。さすがにびっくりした。

騒動が一件落着し、わたしが「いつもきてくれてありがとう(※ 大家のばーさん関連で、ここに警察や消防士がくることは日常茶飯事)」、4階に住むフランクが「女性の声には気づいていたけど、いつも警察を呼んでばかりで申し訳ないと思って…」と言うと、若い警察官たちは、

「それが僕たちの仕事だから。いつでも呼んでね!」

「そうそう、喜んで助けに飛んでいくよ!」

と、ドラマのような、さわやかすぎる言葉をかけてくれた。

ニューヨークの警察には不快感と威圧感を覚えた経験しかなかったけど、この言葉と、彼らの誠実そうな笑顔に感動。あの権威の象徴として見慣れた重々しい紺色の制服が、ここまでスタイリッシュに見えたことがあっただろうか。

人が集まる都会ならではの無関心は怖い。日中のニューヨークで、道ばたで殺人があったのに誰も気づかなかった(気に止めなかった?)なんていうことも過去にあったらしい。

ここでは「異変」の定義が難しいけど、何かに気がついたらちゃんと通報しようと思う。