映画「The Sessions」

最近観た映画をもうひとつ。

「The Sessions」

“Iron lung(鉄の肺)”という人工呼吸器につながれていないと命を保てず、首から下が完全麻痺の主人公(John Hawkes)が、セックス・セラピスト(Helen Hunt)や、牧師(Wiliam H Macy)の力を借りて、童貞を捨てるまでの「セッション」を追った作品。

ジャーナリストで詩人のMark O’Brienさんの実話に基づいているそうだ。

セックスが困難なほど身体に障害がある方の性を面と向かってとり上げた作品はこれまで観たことがなかった。セックス・セラピストという職業の存在自体も初耳であった。映画では、プロスティテュート(売春婦)との違いも描かれている。

これまで注目されてこなかった職業に光を当てた作品としては、アカデミー賞を受賞した日本映画「おくりびと」もそうだ。あの映画から納棺師という職業を知った人は、海外はもちろん日本国内にも多かったことだろう。

40代後半のヘレン・ハントのフルヌードばかりが話題をさらっていた感はあったけれど(いや、潔すぎて、全然やらしくないです。)、裸であることなど忘れるくらいに実りのある映画だった。エンタメなので、多少は美化し過ぎのところも確かにある。しかし、「障害を持つ人たちの性」「相互のオーガズム」という話題を、これほど真正面から扱ったチャレンジ精神を目の当たりにして清々しい気持ちになった。

日本での公開は、まだ未定のようだ。セックスが ”HENTAI(変態)” の頭文字である ”H(エッチ)” と呼ばれ、性教育だって、数学の「サイン、コサイン、タンジェント」を教えるかのように機械的なノリで済ませられるのに、快楽の追求と便宜性に特化したセックス専用ホテルが一般的に利用され、海外では規制されている類のポルノが青少年でも比較的簡単に入手できる…という奇妙な性環境下におかれている国民たちのマーケットに、こういうテーマは受け入れられるのだろうか。

※以下ネタバレ

印象的なシーンはたくさんあったが、ひとり目のアシスタントの女性が、主人公マークの求愛を受け入れられないことに涙する姿を観て、複雑な気持ちになった。マークが障害を持っていなかったら、彼女はこのように涙しただろうか。

本人が自分の状態をかわいそうだと思っていないのに、他人から勝手にかわいそうだと決めつけられ、涙まで流されるのは、ひどく傷つくことだと思うのだ。”善意のナイフ”なだけに、余計にやるせない気持ちにならないだろうか。

しかしながら、この映画のマークの強いところは、自分をよく理解していて、哀れんだり卑屈になったりしていないところだろう。そうだからこそ、他人の気持ちをそのまま感謝して受け入れることができたのだと思う。

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